富士山御殿場ルート日帰り登山
2015/09/07
一度は登ってみたかった
  • 天気が良く空気も澄んでいる日は、自宅のベランダから富士山を見ることができます。それを見ながらぼんやりと「いつかは富士山に登ってみたいな」と思っていましたが、当時登山はしていなかったため、特に具体的な行動へ移すことはありませんでした。

  • 私のメインの趣味はスキーです。コブや深雪を滑りたがるスキーヤーですが、ある程度の年齢になると筋力が落ちてくるため、冬の時期以外はトレーニング目的でランニングをしています。しかし真夏の時期のランニングは苦行そのものなので、夏向けの他のスポーツとして登山を始めました(*1)。ここ3,4年のことです。

  • 登山もあくまでトレーニング目的のため、真夏の時期に1,2回、体力は要求されても技術は低レベルで行ける山を選んでいました。そして今年は富士山を登ることに決め、実際2015/08/22に登ってきました。今回はその様子をレポートします。
御殿場ルートの選択と行程表
  • 富士山には主に4の登山ルートがあります。どんなルートがあるかは富士登山オフィシャルサイト等を見て頂くとして、タイトル通り、今回は御殿場ルートを選びました。その理由は下記になります。
    • トレーニング目的なので、とにかく体力を要求されるルート
    • 都合と天候の両方が良い時にさっと行くため、交通手段はマイカー

  • 下記が、御殿場ルートの全体図です。オリジナル(*2)のマップより一部抜粋したものです。クリックで拡大します。


  • コースの各ポイントにおける、時間と高度をまとめてみました。最初は登りです。尚、表中の「太郎坊」は御殿場口新五合目を指します。


  • 次は下りをまとめた行程表です。



  • 上記に示した登り/下り行程表の右端表外に書いてある時刻は、2015/08/22に私が登山したときの「時刻を記録した」ものです。御殿場ルートの標準タイムは、登りだけで見てもあちこちのサイトで7時間〜10時間とばらつきがあるので、時間は参考程度に見て下さい。表中で赤背景の数字は個人の体力/筋力によって大きく変わると思われるところです。

  • 今回の山行では、結果的に上記予定表にほぼ沿った時間で行動することができました(登り途中で90分以上遅れたら、途中で下山するつもりでした)。これを見られている方は、どの程度の体力の持ち主が上記の結果になっているのか興味があると思いますので、ちょっと恥ずかしいですが私の体力について少し書きます。

    • 通常の山行では休憩込みで標準コースタイムの80%で行動します。今回長丁場なので意識して遅く歩きました。
    • 身長168cm, 体重60kg, 中年男性です。尚今回の下山後は3kg落ちて57kgになってました(^^;
    • 登山以外の運動習慣があります。ハーフマラソンは1時間38分台です。

  • 上記を見てお気付きかと思いますが、私は普通より体力がある方です。ですが、今回の御殿場ルート日帰り登山はすごくキツかったという印象です。なので登山経験又は運動習慣が無い方に御殿場ルート日帰り登山はお勧めしません。それでも、このコースから登るのであれば、七合/八合の山小屋を利用するべき(*3)だと思います。
御殿場ルート登山レポート(駐車場〜次郎坊:登り)
  • では、ようやくですが2015/08/22の登山レポートに移ります。前日の仕事から帰宅後、そのまま車を走らせて、御殿場口新五合目の駐車場を目指しました。尚、駐車場は「ここ(Googleマップへのリンク)」になります。国道246号から「ぐみ沢丸田」交差点で県道23号へ入った後、陸上自衛隊の駐屯地を過ぎるまでに3,4ヵ所コンビニがあるので、そこで飲料水(ペットボトルx4)や食べ物(パンx2,おにぎりx2)を調達しました。

  • AM1:30頃に駐車場到着。第1駐車場は満杯で第2駐車場へ。こちらはスカスカで真っ暗。夕方の天候急変を警戒して15:00までに下山したければ、もう出発しなければなりません。仮眠取る余裕無し。う〜ん完全に徹夜登山です。ヘッドライトは命綱のため予備電池も含めて確認後装着。登山装備を身につけて車を後にします。当然車のロックも確認。

  • 駐車場も真っ暗なので、ここからヘッドライトを点灯して歩くことになります。駐車場出口から道なりに舗装路を登り歩くと右手に明かりが見えます。トイレ(無料)です。御殿場ルートでは貴重なトイレなので、必ずここで用を足していきます。ここから約5時間(七合五勺まで)はありません。

  • もう1,2分舗装路を道なりに登ると、鳥居が見えます。それが御殿場ルートの登山道入口(1440m)です。時刻は1:54。いよいよ登山開始です。

    御殿場ルート登山口。出発はAM1:54

  • ここから次郎坊(1820m)までは、それほどの斜度も無い砂礫の道が続きます。10分前後で大石茶屋を過ぎ、直後の分岐を左側へ歩いていきます。当日は少々風があるものの天気も良く、空を見上げるとまさに満点の星空が迎えてくれました。この年になって初めて流れ星を見ることもできました。素敵な偶然に感謝です。

  • 尚、この時間でもルート上には登山者がちらほらと見えます。最初ということもあり結構ペースの速い人もいますが、次郎坊までは序の口なので、つられて上げては絶対にいけないと自分に言い聞かせ、少し遅いと感じられるペースを維持して歩いていきました。体が温まって汗をかくようだとオーバーペースという基準です。
御殿場ルート登山レポート(次郎坊〜七合目:登り)
  • さて次郎坊からが本番と言えます。ここからは砂礫の道も斜度が上がり非常に歩きにくくなります。大砂走りの横をジグザグに登っていくイメージです。スローペースを維持して8合目以降への体力を温存します。気温も下がってくる(まだ夜明け前)ので、汗ではなく心拍数が上がらないことを判断基準にして一定のペースを維持しました。

  • スローペースと言いながら、ロスを無くして効率を上げる意識はしていました。一つは足の着地場所で、先行登山者が踏ん張ったであろう足跡...フラットに踏み固められた足跡を足場代わりにして歩きました。これでかなりズリ落ちが防げます。歩幅は当然狭く、ほぼ軸足つま先の前に次の足を置くイメージです。

  • もう一つは小休止です。何だかんだ言っても、心拍数は少しずつ上がってしまうので、10〜20秒程度の停止が多く入ります。その際リュックの下にストックを差し込み、立ったままでも荷物の負荷を軽くして、心拍数の回復スピードを上げるようにしました。尚、風を遮るものは全く無いため、風が強くなると体温を奪われます。着たり脱いだりしながらの体温調節が必要になってきます。

  • このように登り始めて、新六合の手前で朝日を迎えました。時刻は4:56。登山開始から約3時間です。完全な日の出は拝めませんでしたが、雲海の上に乗るオレンジ色も十分感動ものでした。


    御殿場ルート新六合目手前でのご来光。ちょっと雲がかかってしまった。

  • その後20分ほど登って、新六合目の山小屋(休業中)に到着(5:15)。小屋の影に身を置いて風を避けつつ10分程度の小休止を取りました。パンを1個食べてエネルギー補給です。

  • 休憩後は六合目を目指して1時間弱の登山です。登山道の状況は変わらず、ここからもズリ落ちる砂礫との格闘を続けます。そして6:15、ようやく六合目に到着。特に何も無く、小屋跡(廃墟)と標識だけです。


    六合目は廃墟と標識だけでした。七合目まで約1km。

  • 気付くと、砂礫でズルズルだった登山道がこの辺りから少しずつ締まって歩きやすくなります。とは言ってもジグザグの折り返し部はまだ緩いです。登山道の横見ると大きめの石もあるので落石に注意し始めるゾーンになります。状況の変化に喜びつつ、七合目を目指します。

  • 六合目と七合目の間に3000m地点がありました。6:48に到達です。なかなか到達しない山小屋への心理的アクセントになったと思います。3000mという数字を見て「だいぶ登ってきたな」と実感できました。


    小さな標識が、登山道横に「プスッ」と刺してある

  • 3000m地点を越えてから10分程登ると七合目に到着します。写真を撮り忘れてしまったのですが、ここで大事なのは七合目手前にある、登山道と下山道の分岐点です。よく場所を覚えて、下山の際間違えないように。
御殿場ルート登山レポート(七合目〜御殿場口頂上:登り)
  • 時刻は6:58。登山開始から5時間後に七合目到達です。しかし山小屋(日の出館)は閉まっています...。5時間経過してもトイレ無しというのは結構すごいことだと思いました。結局そのまま七合五勺の砂走館を目指して、更に20分程度登ります。

  • 程なく(10分程度)して七合五勺に到着。ここで小休止を取ってトイレとカロリー確保です。ここまで催さずに済んでほんとに良かった。久しぶりに地べたや岩でなくベンチに腰をかけます。おにぎりを食べつつ休憩です。ここにはバイオトイレがあり有料(300円)です。小銭は用意しておきましょう。

  • この休憩中に、自分の体と脳内会議を行います。体に異常は無いか、強い疲労感や不調は無いか、筋肉が痙攣しそうになっていないか、マッサージなどしつつチェックをしました。問題があればUターンしてそのまま下山ですが、大丈夫そうなので、このまま登山続行です。

  • ここから先は急激に登山道の様子が変わって行きます。土の色が赤くなり、こぶし程度の大きさの石が混ざったザレ場となります。自分の足で落石させないよう注意しながら登っていきます。また登山道と下山道が一緒になるため、急に下山者との離合機会が増えてきます。御殿場ルートには大砂走りがあるため、登りが別のルートでも、下山は御殿場ルートを選ぶ人も多く、登山道は下山者の比率が多めです。と言っても混雑はしていません。


    七合九勺より登山道を見る。ザレ場の様子が変わってきます。

  • ツアーの団体が降りてくると、待ち合わせ面倒なのは容易に想像できるとして、富士山独特だと思うのはトレイルランナーの多さです(*4)。下りは本当に走ってくるので結構たまげました。ちなみに登りもランナー風登山者にバンバン抜かれました。同じ生き物とは思えない体力差です。

  • 七合九勺の赤岩館へ8:15に到着しました。登山開始から約6時間20分で予定より30分ほど前倒しです。この分だと10時前には山頂へ着くかなと、たまに頭がクラっとするけど寝不足の影響だろうと、このときは考えていました。10分程度休憩後、頂上へ向かって出発です。


    まだ「でかすぎるピラミッドみたいだ」と景色を楽しむ余裕があった七合九勺

  • この後20分程度で8合目(山小屋は休業中)に到着するのですが、この段階で完全におかしくなっていました。視界がブラックアウトしそうな眩暈に襲われるようになったのです。症状としては脳貧血でした。恐らく高山病です(*5)。この後どうするか悩みましたが、立ち止まると眩暈も治まるため「休み休み時間をかけて登ろう」と決意しました。


    ここが私の頂上かも...と一瞬下山を覚悟しました

  • 登山道の様子は更に変わりガレ場に近い様相を呈し始めました。状況が変化した登山道をゆっくり歩いているうちに、心拍数を抑えれば、眩暈が起きにくいことに気付き、次郎坊から六合目までと同じように、心拍数を意識しながら停止を挟みつつ登っていきます。しかし3400mを超えているためか、頻繁に心拍数が上がってしまい、少し歩いては小停止を繰り返すことになりました。足の筋力には余裕があったため、思い通りに行けないというストレスがたまる...。

  • しかしながら終わりはやってくるものです。我慢を繰り返して歩いていたところ、頂上の鳥居が見えてきました。急がないように心を抑えてゆっくりと歩き、時刻は10:30、遂に頂上へ到着しました。ばんざーい!!

  • 体調の余裕が無かったため、山頂撮影は二の次にして、とりあえず腰を下ろして休憩することにしました。10分程で気分も良くなり、水を飲みつつ軽い食事を取りました。何だかんだと20分程度休み、ようやく普通の状態に。とりあえず座っている場所から山頂や火口を撮影します。このとき頂上は運良く晴れていました


    頂上から火口を見る。中に雪が残っている。座っているすぐ横が絶壁だと実感。ちょっと怖い。


    左手に見える鳥居が、御殿場口頂上の入口。右手鳥居は富士宮口頂上への通路(すぐそこ)

  • さて、すぐ横に見えている剣ヶ峰に行くかどうか考えましたが、ここでまた眩暈で悩むのは嫌だったので、もう少し体調の心配が無いときに登ることとし、今回は見送りました。この後富士宮口頂上のトイレ(もちろん有料)で用を済ませ下山開始です。具合が良いうちにサッサと下りてしまわなければ。
御殿場ルート登山レポート(御殿場頂上〜七合目:下り)
  • 下山開始は11:15でした。七合目までは登ってきた道を戻ります。足元はガレ場/ザレ場のため、転倒と落石に注意しながら下ります。熟練登山者は下りのペースが速いため、登山者と下山者の両方に気を配りながら歩くこととなり、少々気疲れしました。それでもほぼ予定通りの時間(12:00)に七合九勺へ到着です。やはり下山は早いです。

  • ここで御殿場ルート登山者と会話。すでに複数回の富士登山経験があるものの、御殿場ルートで登るのは今回が初めてとのことでした。このルートの登りはとてもしんどいですね〜という話になったのですが、実は富士登山そのものが初めてだという私の状況については、怒られそうな気がして言えませんでした。

  • 更に七合目に向かって下山をします。私が登ってきたときよりも人が多くなり、思ったより時間がかかりました。七合五勺の砂走館に到着したところで、まだ2時間経っていませんが小休止を取ります。目的はこの後の砂走り突入準備、スパッツの装着です。リズミカルに歩くためストックも収納しました。

  • このとき雲の中で少雨の状態となっていましたが、行きに下山道との分岐点を確認していたので、視界が悪くても迷いはありません。さっと下山道との分岐点へ向かいます。また七合目から登山道が広くなる上に、登り/下りが別になるので、離合に気を使うことも無く快適に歩けるようになります。
御殿場ルート登山レポート(七合目〜太郎坊:下り)
  • そう言えば、下山のレポートは写真が無いなぁと思われている方多いでしょう。実は山頂到達前の体調不良には結構ショックを受けており、下山は体調不良になる前にどんどん下りてしまおうと、写真も撮らずに歩いてしまったのです。剣ヶ峰同様、下山ルートのレポートについても、いつかリベンジしたいと思います。

  • さて、七合目直下の分岐点から砂走りが始まります。足首が潜るような砂礫ですが、斜度があるため自然と足が前に出て行きます。ただ大きな石も転がっているため、転ぶと怪我をしそうです。スピードを上げすぎないように注意しますが、それでも結構早いです。膝を伸ばした状態で前足を入れれば、負担はかかりません。

  • あっと言う間に下り六合の分岐点へ到着です。ここからは大砂走りになります。更に砂礫が細かくなり、ほとんど砂場状態です。先ほどと違って、転んでも怪我するようなことは無いでしょう。周りを見ると砂煙を立てながら、走るのに近い勢いで下山している人が多数居ます。私もたまに休みながら同じように下山したところ、14:10には次郎坊に到着しました。登山時の苦労が嘘のようです。

  • 次郎坊到着の前には天気も良くなり、むしろ暑い状態になりました。次郎坊から大石茶屋へは、ほぼ直線の道をひたすら下っていきます。大砂走り程ではありませんが、砂礫の道であるため、普通の下山よりは早く歩けます。今回の富士登山も終盤です。気分はウイニングランです。

  • あまりにも調子よく歩けたので、ちょっとしたランナーズハイ状態になっていたと思います。そのせいか、すでに疲労で腰痛が出始めているにも関わらず、大石茶屋をそのまま抜けて、太郎坊へ直接向かいました。そして14:46に登山口鳥居へ到着です。危惧していた体調不良にもならず、無事に帰ってこれました!!


    14:46撮影。出発の鳥居と同じですが、気分ががハイだったので...

  • ちなみに「富士山保全協力金」ですが、夜中出発の場合は、さすがに麓で払うわけにはいかないので、今回の時間軸で行動する場合は、下山後払うことになります(係員の方が立っています)。緑枠の缶バッジを頂きました。

富士登山を終えて
  • 今回の富士山御殿場ルート日帰り登山というイベントは、非常に苦労しつつも何とか達成できたため、太郎坊の駐車場へ戻ったときには本当に感動しました。こんな気持ちになったのは久し振りです。

  • 行動予定検討時に覚悟していたものの、本当に13時間近い山行となりました。今までの連続行動は8時間がMaxだったため、完全に実績無し/根拠無しです。また8合目で登山続行を判断したことと言い、いつもよりアグレッシブだったようです。追い込まれたときにどんな判断をするのか、自分の本性を垣間見た気もしますが、今になって考えると非常にリスキーだったと思います。ちと反省せねば。

  • その他には、登山開始時の星空が強く印象に残りました。登山とは別に夜空のハンティングも良いなと思うようになりました。勢いで星座とか覚え始めそうです。
Notes
  • 泳ぐのが苦手なため、マリンスポーツは選びませんでした。サーフィン面白そうなのに。
  • 富士登山の服装・持ち物・装備の初心者向け準備ガイド さんの 御殿場ルート地図(日本語版) Gotemba_Trail.pdf がオリジナルです。わかりやすいマップに感謝です。
  • 御殿場ルートは空いているので、快適に山小屋を利用できそう。普通に朝10:00頃出発して、16:00頃に山小屋へ到着。ゆっくり過ごしてからご来光見に行くのが良いプランでは。自分が行きたくなってきました。
  • 富士山って、そんなにトレイルランしやすいイメージは無かったんですよね。
  • 脳貧血は血中酸素摂取能力の問題ではなく、自律神経が弱っているときに起きます。そして根本的に酸素も不足。だから寝不足は駄目なのか...と理解しても時すでに遅し。尚私はヘマトクリットが基準値上限を少し上回るタイプです。
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