ホームネットワーク構築(1)
2016/10/02 (updated 2017/09/02)
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ホームネットワークの管理についてまとめよう
- ホームネットワークの管理を私から他へ移管するために、管理...この場合構築とトラブル対応ですが、管理に必要なホームネットワークの基礎知識をまとめてみることにしました。
- まず「ホームネットワーク」という小規模のネットワークの構成要素を見てみましょう。ホームネットワークを管理するとは、下記要素の役割を理解し、何を設定すべきか把握することです。
図1 : ホームネットワークの構成例
-
図1の中に「家の壁」がありますね。家の内側、つまりLANの世界では、学校や職場での接続手順などから「何かIPアドレスのところで自動取得とかに設定して...」といったイメージが朧気に浮かぶと思いますが、その先でインターネットにどう繋がるかは管理者(or家族の誰か)任せという感じでしょう。
- しかし自分でホームネットワークを構成して管理する場合、インターネットサービスプロバイダ(Internet Service Provider : ISP)や、自宅とISPを接続するネットワーク回線を提供する回線事業者(Line service provider : LSP)との契約が必要になります。これらは自宅でネットを接続する際一番初めにすることですが、意味がわからないと契約時に何も判断できません。
- そんな訳で、まずは自宅とISPを接続するネットワーク回線から話を始めたいと思います。
ネットワーク回線について把握すべきこと
- まず初めに調べるのは、自分の住む家に接続可能なネットワーク回線は、どこの回線業者が、何を使用しているのかを把握することです。これによって契約可能なISPと月々の費用が判明し、また宅内LANの設計も開始することができます。
- 一軒家であれば施工主である自分が回線業者を選ぶことも可能ですが、集合住宅の場合は管理人(組合)や大家さん(不動産業者)へ聞くことになります。ですが、集合住宅の場合は要領を得ない回答が多く、相手の反応により質問の仕方を考えながら(*1)聞かないと手こずるため、ネットワーク回線に関する基本的な知識はあった方が良い訳です。
図2 : ネットワーク回線とISP
- ネットワーク回線は
- [1]ISPと接続する基地局から自宅の最寄りポイントまで
- [2]最寄ポイントから自宅モデムまでの接続
にわけて考えることができます。
- 集合住宅を含めた個人宅に基地局とネットワーク接続する場合、ほとんどが下記の分類になります。ちなみにADSLは新規と言うより現在ADSL(*2)で接続している方向けへの項目です。
表1.個人宅と基地局ネットワークの分類
接続分類 |
下り最高速(*3) |
[1]基地局⇔最寄ポイント |
[2]最寄ポイント⇔自宅モデム |
光ファイバ/VDSL |
100Mbps |
光ファイバ |
VDSL(電話線) |
光ファイバ |
1000Mbps |
光ファイバ |
光ファイバ |
ADSL |
50Mbps |
ADSL(電話線) |
ADSL(電話線) |
- 表1に書かれていないケースとして、[1]基地局⇔最寄ポイントにて、ケーブルTVのアンテナ線を利用するケース。[2]最寄ポイント⇔自宅モデムにて、既にLANケーブルが分配されている等があります。
- あとは...WiMAXという手もありますが、今回は除外します。WiMAX2+エリア拡充とアクセスネットワーク強化が落ち着く来年あたりから検討対象に入ると思います。WiMAXは現状モバイル限定というのが私見です。
ネットワーク回線:光ファイバ/VDSL
- ネットワーク回線の構成例として、光ファイバ/VDSLから見ていくことにしましょう。現在の集合住宅の多くは、この構成を取っていると思います。
図3 : 光ファイバ/VDSL
-
回線事業者の基地局から、近くの電柱(又は地中)まで伸びている線から分岐した光ファイバが、建屋の集合光回線終端装置(Optical Netowrk Unit : ONU)に接続されています。この装置は大抵の場合、電話線等をまとめる主配線板(Main Distributing Frame : MDF)が置かれた、集合住宅の共用スペースに設置されます。
- 更に共用スペース内では、ONUによって光ファイバからEtherネット(*4)に変換され、VDSL用DSLAM(DSL Access Multiplexer)と呼ばれる集合VDSLモデムに接続されます。そのVDSL用DSLAMでEtherネットから電話線(メタル線)に変換され、MDFに接続されます。ネットワークの信号はMDFで各戸への電話線に混ざり込み、ようやく部屋の中に置いてあるVDSLモデムへ到達します。
VDSLとは
- VDSLは、Very high-speed Digital Subscriber Lineの略です。VDSL後半3文字のDSLは電話線(メタル線)でデジタル信号を電話用音声信号と相乗り通信させる技術であるxDSLを指します。このxDSLには何種類か規格(*5)があり、VDSLの先頭文字Vはその中でも高速の規格であることを意味します。VDSLでは最大で下り100Mbps, 上り40Mbps程度の通信が可能です。
- xDSLを理解するポイントは「電話音声信号とデジタル信号の相乗り...それが何故できるのか」にあります。その答えは「電話音声信号とデジタル信号で使っている周波数帯が違うから」です。テレビ用のアンテナ線と同じです。
図4 : 電話線内の電話音声とVDSL周波数帯域
- 上図のように使用している周波数帯が異なるため、電話とVDSLは、それぞれの周波数帯域を扱うことで、同時に使用することができます。当然VDSL側は信号の変調/復調(*6)が必要なため、VDSLモデムが電話線に接続されます。ちなみに電話の周波数帯域は、音声の帯域そのままで、変調/復調は行っていません。
- 当然ながら電話線には電話の音声信号も乗っているため、電話線を分岐(スプリット)して電話機自身にも接続します。最近のVDSLモデムはスプリッタ内蔵がほとんどです。
ネットワーク回線:光ファイバ
- 電話線を経由するxDSLとは異なり、光ファイバで全て接続した方式はシンプルです。基地局のOLT(Optical Line Terminal)から光ファイバが伸びています。その光ファイバを分岐するスプリッタが、一戸建てであれば家の外の電柱、集合住宅であれば共用スペースに置かれています。分岐された光ファイバは各戸のONU(Optical Network Unit)へ接続されます。
図5 : 集合住宅の光ファイバ接続
図6 : 一戸建ての光ファイバ接続
- これからネットワーク回線を構成又は更新する場合、上記のような光ファイバ/光ファイバ接続が第一候補になります。一戸建ては、この接続方式でほぼ決まり。集合住宅は光ファイバを各戸へ配線できるかどうかで決まります。
- 光ファイバ分岐には、多重化を用いる方式と、上図のように光スプリッタを用いる方式があります。はっきり言うと後者が主流です。PDS(Passive Double Star)やPON(Passive Optiocal Network)と呼ばれます(*7)。OLTとONU間の通信速度は数Gbpsオーダとなりますが、光スプリッタでの分岐数によって実効通信速度は変わります。
ネットワーク回線:ADSL
- ADSLは先程説明したxDSL規格の一つです。ADSLの'A'はAsymmetricの略で、上り/下りの速度が異なる(非対称)ことを意味します。実はVDSLも上り/下り速度非対称ですが、このネーミングルールのセンスは...(おっと、それ以上はいけない)。
- ADSLの通信速度はVDSLよりも低く(下り最大50Mbps)なりますが、通信可能距離が長いため、NTT電話局内のMDFで配線変更行い、特に各戸での工事は必要ありません。
しかしながら、電話線も光収容による多重化が進んでいるため、新規でADSLを接続するのは少なく(*8)なってきているように思えます。
図7 : 集合住宅のADSL接続
図8 : 一戸建てのADSL接続
ADSL回線から光ファイバへの切り替え
- ADSLについては、ADSL接続している環境を光ファイバ系へ変更する際の注意点を考えることが今の多数派でしょう。今からADSLを新規接続するメリットはちょっと思い付きません。
- 一戸建ての場合話は簡単で、先程説明した図6のように、光ファイバを自宅のONUまで引き込んだら、自宅LANをONUに接続するだけです。引き込んだ光ファイバは電話回線と別なのでADSLとの技術的な絡みは無く、単に光ファイバの工事日程に合わせてADSLの契約を終了させるだけです。あ、もちろん借用しているADSLモデムとスプリッタは返却ですね。
- 注意が必要なのは集合住宅の場合です。運良く光ファイバを「各戸へ配線」できれば、一戸建てのケースと同じでほとんど問題はありません。しかし各戸への配線に「VDSL」を使う場合はややこしくなりがちです。同一電話回線内でADSLとVDSLは共存できないからです。
図9 : ADSLとVDSLの使用周波数帯
- 図9で示すように、ADSLとVDSLは使用する周波数が被っています。よって同一電話回線内(*9)では原則併用できません。つまりADSLからVDSL経由/光ファイバへ乗り換えるには、VDSL接続の前に「確実に」ADSL側を切断しなければいけません。光ファイバ各戸引き込みのケースは別回線なので、NTT基地局側のADSL接続がどうなっていようが、契約さえ処理されればどうでも良かったのですが、VDSLへの切り替えでは、基地局側のADSL回線切断が必須になります。
- このADSL切断工事の依頼とフォローをきちんと行うことがADSLから光ファイバ/VDSLへ切り替えを行う際のポイントとなります。工事のイメージを図10に示します。NTT電話局側と集合住宅それぞれのMDFに対して接続変更の工事を行います。NTT電話局のMDFはNTTが管理しているので、ADSL回線事業者に切断工事依頼をしたとき、実施までもたつくことがあります。ADSL切断工事管理がポイントになる理由の二つ目がここにあります。
図10 : ADSLからVDSLへの切替工事
- これで、各戸へのネットワーク接続に関する技術的な話は終わったのですが、集合住宅では勘違い故に理事会などで揉めることがあります。(わかっていない方が多数派です...。皆初めてだし。) その例を挙げます。
- ADSLとVDSLは共存できないと聞いたが、ADSLのままにしたい。
- 同一電話回線上の話ですが、集合住宅全体の電話回線集合と個別配線の区別が付いていない場合の質問です。
- 「ADSLかVDSLかは、集合住宅のMDFで戸別に選択できる」と説明します。(図10のことですね)。
- 今はADSLだけど、子供がいないので契約内容がさっぱりです。
- 「VDSLへの切替はいつでもできるから、焦らず子供さんを呼ぶか教えてもらうかして下さい」と伝えます。
- 理事会では大抵業者さんもいるので「契約戸数を確保したかったらフォローしてあげてね」と頼みます。
- こんな感じで、集合住宅のVDSL切替は結構相談事が発生します。個人的には、全体の話に極力関わらないようにするのが良いかなと。だってすごく面倒くさいから。
- 次回はISPを含めた契約と、インターネットそのものの話をしたいと思います。
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Notes
- 回線業者だけ教えてもらい、詳細はそこに聞くのがほとんどです。誰かを仲介すると駄目な伝言ゲームになるので、自分で聞くのがお勧めです。
- 家族の誰かが10数年前に接続してから、そのまま使っているので、現状がよくわからない、というケースですね。
- 実速度は、これの5〜6割程度。
- 恐らく100BASE-Tか1000BASE-T。
- ADSLもxDSLの規格の一つです。xDSLって本当は Digital signal transceiving over subscriber line for telephon だと思うのですが、電話線は基本Analogだから、そこにDigitalをくっつけたら、もうわかるよね的な略語がすごいです。
- MOdulation(変調)とDE-Modulation(復調)、略してMODEM
- 光スプリッタはOLTからの全パケットをONUに配り、ONU側で自分宛てのパケットを選び取ります。LANのリピータハブのようなイメージとなります。
- 光収容で多重化している場合、ADSLの周波数帯域を削ってしまうため、ADSL接続はできません。
- 「大事なことなので二回言いました」のパターン。
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