4WDってどこが良いの?
2017/06/18
知られていない4WDの利点
  • 近年は世界的にSUV(Sports Utility Vehicle)が流行っています。ブームの理由はセダンやミニバンより自由度が高いデザインと、その汎用性だと私は思っています。そしてSUVと言えば4WDです。今回は4WDの利点について話したいと思います。

  • 私はスキーを趣味としていることもあり、この20年間ずっと4WD車に乗っています(*1)。今はSUBARUのForesterです。そのせいか、酒の席等で4WDのどこが良いのかという会話によく巻き込まれ、大抵の場合下記のような感じです。
    • 4WD否定派
      • 私は雪道やオフロードはほとんど走らない
      • 重くて燃費悪い
    • 4WD肯定派
      • 悪路走破性が高い
      • デザインが「趣味で使う道具」にマッチしている

  • 見ればわかりますが主張が噛み合っていません。その後は「悪路を走る機会が無ければ4WD無駄でしょ/いやそこは趣味だから...」という流れに入っていきます。よくある光景です。

  • 黙って聞いていると「ずっと4WDに乗ってるAltmoはどうなの?」と聞かれるので「クロカンじゃなくてクロスオーバーなら」と前置きしつつ下記のように答えています。
    • 4WDの悪路走破性は言うまでもない(肯定派ヨイショ)
    • FFやFRに比べて4WDの燃費が悪いのも確か(否定派ヨイショ)
    • でも直進やコーナリングの安定性は4WDが一番良い

  • 「だから燃費優先ならFF/FRだけど、乗り味を求めるなら4WDがお勧め」と言うものの「どういうこと?」と聞かれ、話が長くなる傾向に。次はその中身を紹介していきたいと思います。

4WDの利点(1):直進安定性
  • 一つ前提として、私を含めた多くのドライバーは、サーキットやジムカーナで走るといった車の限界性能を意識したドライビングはしていません。どこを走るにしても性能的には余裕のある状態で走ります。

  • 例えば高速道路を走るとき。首都高速は例外として、主要高速道路で直線もしくは緩いカーブを走るケースです。悠々と走っているそんな時でも、我々は微妙なハンドル操作を無意識にしています。

  • その理由は、直進をしている場合でも、道の凹凸(*2)や横風等の入力によって、直進時でもタイヤのスリップアングルは常に微小変化しているからです。また無風で道が平坦だったとしても、グリップが変わればトー角によるスリップアングルの微小変化が発生します。

  • FFやFRではトラクションのかかるタイヤはフロントもしくはリヤの2輪ですが、4WDはトラクションが4輪に分散されます。これはあるタイヤのアングル変化影響が分散されることを意味するため、直進安定性が増すという運転感覚につながります。

  • 直進安定性が良い車は無意識の操舵が減るため、疲れない/楽に長距離を走れるという感触を得やすいのです。楽に走れるということはスピードも出してしまいやすい(*3)ので、その点は注意ですね。

4WDの利点(2):ニュートラルステア
  • 時速30km以上を想定しますが、カーブ侵入前に減速してハンドルを切ると、前輪の角度に合わせて車は旋回していきます。旋回中は特にリヤ側タイヤのスリップアングルが大きいため、アクセルを踏まないと減速していきます。よってコーナリング中にドライバーは減速しない範囲で無意識にアクセルワークを行っています。

  • さらにFFの場合は弱アンダーステア傾向にあるので、アクセルを少し踏むと、その分ハンドルの微小切り増しが発生します。FRの場合は弱オーバーステア傾向なので逆の操作になりますが、何れもドライバーは無意識のハンドル操作を行っています。

  • 4WDはニュートラルステアと呼ばれていますが、前輪で引張り後輪で押すため、一度角度が決まったらそのまま旋回していきます。アクセル一定かつハンドリング一定できれいに旋回するため、コーナの多い山道/渓谷沿い道路を楽に運転できます。

  • つまり4WDの悪路走破性以外の利点は運転が楽になるというものなのです。

4WDの操縦安定性を楽しむにはフルタイム4WDが必要
  • ここまで説明した操縦安定性については、4輪にトラクションがかかっていることが前提になります。常に4WD走行つまりフルタイム4WDです。しかし最近流行りのSUVは、過剰な燃費への要求や排ガス規制に押されているせいか、そのデザインとは裏腹にリアルタイム/オンデマンド4WDであるものが多いです。通常走行時はFFかFRで走行し、前輪/後輪の回転差を検出したら4WDへ移行する方式です。

  • またフルタイム4WDと言っても、タイトコーナーブレーキング現象を回避するために、低速でハンドル切れ角が大きいときは自動でFF(*4)にする制御は大抵入っています。このためか、前後トルク配分100対0から50対50まで制御できるという言葉が独り歩きして、通常走行時の配分がどうなのかわかりにくい諸元表が多い気がします。ここはメーカーさんに確認すべき点だと思います。

  • つまり大事なのは通常走行時のトルク配分を確認し、ドライビング重視なのか、燃費重視なのか、自分の希望に沿った4WD方式を選ぶことなのです。

トラブル回避のために4WD方式の把握は必須
  • リアルタイム/オンデマンド4WDは、2WD/4WD制御を自動で行うため、ドライバは制御を意識していないかもしれません。ですが、大抵の場合SNOWモード4WDロックなどのスイッチで、意図的に4WD状態にできるものも多いです。実はこの機構は4WD車でトラブルが起きやすい場所でもあります。

  • その理由ですが、前後輪へのトルク配分を決めるカップリング装置、多くは油圧/電子制御の湿式多板クラッチを使用していますが、通常走行の状態が結合か非結合かが重要で、通常走行がFF/FRなら非結合、4WDなら結合ということになります。

  • 湿式多板クラッチは内部のシリコンオイル(固い)で結合しています。前輪側と後輪側で回転差が発生したときは、多少の回転差を許容するLSDとして機能します。回転差による摩擦は熱に変換され、その熱でシリコンオイルが膨張することで最後は直結となります。

  • SNOWモード/4WDロックは「直結状態」を意味していますが、ドライビング中に「直結状態」がどの程度起こるかという想定によって、カップリング機構は設計思想が異なるため、ほとんどFF/FR走行を想定したリアルタイム/オンデマンド4WDでロック機構を長時間使用すると故障の原因となります。具体的にはロックモード解除を失念して長時間走行してしまい、その後コーナリングや車庫入れ時にジャダー(細かい振動)が発生する等です。

  • 最近はこのあたりも自動制御なので、そんなに心配することはありませんが、説明書を読んだり頭の片隅に置いていれば良いかと思います。
Notes
  • 志賀高原は4WDでなければ全輪スタッドレスでもチェーン必須です。全体の雪質が良い傾向にあるベース標高が高いスキー場を好むなら4WDが良いと感じています。
  • サスペンションで吸収しきれないビリビリとした振動なども。
  • 安定性の高い車で運転していると、気付けばえらい速度になっていることがあります。
  • 例えば車庫入れとかです。クロカン系直結4WDは、このためにレバーで開放できるようになっています。
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