ホームネットワーク構築(8)
2017/09/17
DHCPでLAN内ホストのTCP/IP設定を管理する
  • ここまで、ホームネットワーク(LAN)内ホストのTCP/IP設定について説明してきました。これらの設定は全てのLAN内ホストに対して必要なうえ、IPアドレスがダブってしまうといったミスをしやすい内容でもあります。これらのTCP/IP設定を各PC使用者にお願いすると、多くは設定に慣れていないためにミスが多発し、結局はネットワーク管理者が使用者のPCを1台ずつ設定したほうが早い(*1)という状況になりがちです。

  • まだデスクトップPCだけが使用されていた頃はそれでも良かったのですが、ノートPC等のモバイル機器が入ってくると、それでは管理が厳しくなってきます。こんなときに役立つのがDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)です。


    図1 : DHCPによるホストのTCP/IP設定

  • DHCPは図1のように、LANへ接続したホストがTCP/IP設定を要求すると、DHCPサーバーがホストへTCP/IP設定情報を渡す仕組み(*2)です。ホスト側は(DHCPによって)TCP/IP情報を自動で取得する設定をすれば、特に使用者が意識しなくてもホストをLAN接続したときにTCP/IP設定が行われます。


    図2 : ホスト側DHCPによる自動取得の選択(Windows7の例)

DHCPサーバーの設定
  • ホームネットワーク(LAN)におけるDHCPサーバーですが、大抵の場合ルータがDHCPサーバーの機能を持っています。現実的なホームネットワークの管理は、まずルータのDHCP設定から始まると言っても良いでしょう。DHCPで配るのはTCP/IP設定の4項目(IPアドレス,ネットマスク,デフォルトゲートウェイ,DNSサーバー)ですが、DHCPサーバ設定として少し考慮が必要なのは「IPアドレス」です。

  • DHCPサーバは、LAN接続ホストにIPアドレスを貸出ます。そのため「IP貸出の範囲」をDHCPサーバに設定します。その際、どの程度のネットワーク機器が存在するか、固定アドレスの機器をどうするかといった点を考慮に入れて決定します。下記の表1はIPアドレスの割付範囲検討例です。

    表1 : DHCP IPアドレス割付範囲検討例

  • 上記表1の例ではルータは192.168.10.1で固定しています。また192.168.10.100以降はLAN内でサーバとして動く機器を固定アドレスとして割り当てています。このためDHCPのIPアドレス貸出範囲は、固定アドレスと重ならないように192.168.10.2から32台の範囲としています(*3)。

自宅はDHCPだが、職場は固定アドレス...
  • 最近は大抵DHCPを使用しているので、自宅/職場で使用可能なモバイル機器に固定IPアドレスが付与されているケースは少ないと思いますが、それでもたまに「固定IPアドレス」で運用しているケースがあります。

  • この場合は自宅と職場でTCP/IP設定を変更する必要があります。しかし、職場/自宅で行き来する度にTCP/IP設定するのは非常に面倒です。このTCP/IP設定ですがWindows系の場合"netsh"というコマンドで行うことができます。つまりnetshコマンド列を記述したバッチファイルを用意し、そのショートカットをデスクトップにでも置けば、マウスのダブルクリック(*4)でTCP/IP設定を切替できます。表2は設定例です。netsh使用法の雰囲気を感じ取って下さい。

    表2 : netshによるバッチファイルの例
    職場用固定アドレス設定例
    自宅用DHCP設定例
     netsh interface ip set address ^
       name="ローカル エリア接続" ^
       source=STATIC ^
         addr=192.168.31.15 ^
         mask=255.255.255.0 ^
         gateway=192.168.31.254
    
     netsh interface ip set dnsserver ^
       name="ローカル エリア接続" ^
       source=STATIC ^
         addr=61.122.127.74 primary
    
     netsh interface ip add dnsserver ^
       name="ローカル エリア接続" ^
       source=STATIC ^
         addr=61.122.127.76
    
     netsh winhttp set proxy ^
       proxy-server="192.168.31.100:8080" ^ 
       bypass-list="*.hoge.co.jp"
     netsh interface ip set address ^
       name="ローカル エリア接続" ^
       dhcp
    
     netsh interface ip set dnsserver ^ 
       name="ローカル エリア接続" ^
       dhcp
    
     netsh winhttp reset proxy

  • バッチファイルで設定可能だということは、当然それをGUIで行うためのツールも存在します。ネットワーク設定を完全にBlackBox化せず、使用者に少し意識してほしい場合は、GUI版の切替ツールを使うほうが好ましいかもしれません。この類のツールは検索で探せばすぐに見つかります。

次回はルータのインターネット(WAN)側設定
  • 今回でLAN側の設定の基本は説明が終わりました。あとはルータとISPの接続設定ができればLANをインターネットへ接続できます。これは以前のレポート「ホームネットワーク構築(3)」で書いていたわけですが、次回は今の流れを踏まえ、もう一度ルータのインターネット(WAN)側設定について説明したいと思います。
Notes
  • 今の40代で、当時コンピュータが得意な人は、若いときに職場でこれをやらされたという思い出があるのでは。
  • 無線リピータを経由したときにDHCPトラブルが起きると、図1レベルの理解では対応が厳しいです。これについては無線LAN説明時に扱いたいと思います。
  • IoT機器が入ることで、数年のうちに通常でも64台設定が普通になってくると思います。
  • 管理者権限で実行のオプション指定を忘れずに。
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