意外とややこしいTVデジタル化(2)
2006/10/12
このレポートについて
  • このレポートはTV放送デジタル移行の際に気になる点をまとめたものです。2006年のレポートで既に10年以上経過していますが、当時の認識を掘り起こすため旧HPから引っ張り出してきました。「現在の」という言葉は2006年当時を意味しているのでご注意下さい。

受信環境から見たデジタル化
  • 前回は現状のテレビ放送について説明しました。 VHF/UHF/BS/CSの周波数帯域について、概要を把握できている状態です。 ここでようやくデジタル化の話に入り始めます。 受信環境から見ると「デジタルへの移行」は、下記のように言い換えることができます。
    • 地上波のテレビ放送をUHF13ch〜52chにまとめる
    • アナログBSの前後帯域でデジタルBSが追加される。
    • BSと同一方向のアンテナでCSを受信できる(110度CS)。

  • 図1に、アナログTV放送とデジタルTV放送を重ね合わせた周波数帯域を示します。 これが2011年までのデジタル過渡期の状態です。 尚、BSとCSはダウンコンバート後の周波数です。

    アナログ/デジタル周波数帯
    図1.アナログ/デジタル周波数帯(BS/CSダウンコンバート後)

  • これより新たなデジタル放送へ対応するために我々が用意する受信環境は
    • UHF全域の受信/分配
    • BS+αの受信/分配
    • 110度CS分の受信/分配
    であると言えます。

  • すると「VHF帯はいらないですね」と言われそうですが
    • 現行FMは残る(NHK FMは2011年に停波しますが)...(まだしてませんね。2018/8/22注)
    • VHF帯の1ch分を使ってデジタルラジオ放送が始まる
    • その他新規のサービスが開始される
    といった事情から、VHFの受信環境は残したままにすべきだと考えています。

  • CATVが入っている場合、また状況が変わってくるのですが、 とりあえず「自力受信」かつ「工事は自分で決められる」前提で受信環境を考えてみることにします。

典型的な受信環境(共同受信ではない場合)
  • まずは、自分の裁量でアンテナ工事を進められる場合について考えてみましょう。 これがベースのモデルとなります。図2に受信環境を示します。

    典型的なアンテナ配線構成
    図2.典型的なアンテナ配線構成

  • 始めにUHFアンテナですが、 地上デジタルの主要放送と地方局のデジタル放送を同一のUHFアンテナで受信できない場合、 それぞれのアンテナを設置したうえで混合する必要があります。(*1)

  • また地上デジタルはUHFのLow側も含めて使うので、 従来のアンテナを流用する場合、そのUHFアンテナがHigh側だけでなくLow側帯域も受信できることの確認が必要です。

  • 次はBS/110度CSアンテナですが、 今までBSアナログを視聴していた場合、「恐らく(えいや)」BSデジタルは同一のアンテナで受信できます。 衛星の方向は同じで、受信/コンバート周波数ともBSアナログの前後に少し広がっているのがBSデジタルだからです。(*2)

  • ならばBSデジタル同様、衛星の方向が同じの110度CSも見えるかと言われると「恐らく見えない」でしょう。 図1からわかるように110度CSは受信/コンバート周波数ともBSより高い帯域を使っています。 従ってアンテナ/ブースターとも対応を意識していない場合は見えない可能性大です。 110度CSを受信したければ、BS/110度CS両対応アンテナへ交換することになるでしょう。

  • 最後にブースターです。信号を分配せずに一部屋だけで使う場合は特に必要ありませんが、2,3部屋...となる場合は必要になります。 ブースター使用時の注意点は二つあります。

  • 一つ目はUHF帯域増幅の利得制御です。 地上波デジタルはアナログ/デジタル過渡期の間、 混信を避けつつ出力を徐々にUpさせていきます(*3)その際ブースターも利得調整が必要になります。 これを怠ると、視聴画面が乱れたり、アンテナが発振して周囲に迷惑をかけてしまいます。 この対応策としては、自動利得制御機能付きのブースターを使用するのが最も手っ取り早いと思います。

  • 二つ目は、110度CS帯域の増幅です。ここも従来BSよりも高い帯域なので対応したブースターを必要とします。 もちろん110度CSを視聴しないのであれば特に必要ありません。

まとめ
  • 地上デジタル、BSデジタル、110度CSを含むデジタル波の帯域を把握しました。

  • デジタル放送波を受信するための基本的なアンテナ配線構成と注意点を理解しました。

  • 次回は共同受信設備使用時、CATV混合時に問題となる点を扱いたいと思います。1回じゃ終わらないかも。
Notes
  • 地方局のデジタル放送は見ないから主要放送向けアンテナ1本だけにするという判断も一つです。 指向性が鋭くない分「あっ見える(ラッキー!)」というケースもあります。
  • ただしBSデジタルには追加予定帯域(現行BSデジタルと110度CSの間)があり、ここの放送は受信できないかもしれません。 そのときは見たければアンテナ交換ということに...。
  • ちなみに東京タワーは既に地上デジタル波が最大出力になっているらしいので、 設置時に調整するだけで問題無しと思われます。 これから購入するなら、自動利得制御無しでOKかと。
Copyright(C) 2006 Altmo
本HPについて