FB20/FA20DITエンジンの環境性能(4)
2020/10/17
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タンブル流が必要な理由
- FB20/FA20DITエンジンの環境性能に関して最後になりますが、今回はTGV(Tumble Generation Valve)を扱います。
- TGVは、エンジンが低回転で空気吸気量が少ない状態でも、シリンダ内でタンブル(Tumble)流を発生させる仕掛けです。そして、そもそも「タンブル流」とは何かですが、エンジンシリンダ内で発生する縦方向回転の流れのことです(*1)。近年の燃費が良い/環境性能の高いエンジンでは、このタンブル流が重要になっています。
- 従来のエンジンであれば、EGRはストイキ燃焼維持のために存在していましたが、現在では燃費性能を上げるためにEGR還流率が上がっています。このためシリンダ燃焼室内の燃料密度は下がって(*2)おり、燃焼効率を維持するために均一に燃料を分布させる必要があります。
- そして吸気ポートからの燃料噴射ではなく、FB20/FA20DITのように燃料を直接シリンダへ噴射するエンジンでは、燃料をシリンダ内で均一分布させるためにタンブル流は必須なのです。
Figure 1: 吸気時のタンブル流
- また吸気時にシリンダ内で発生したタンブル流は圧縮時も維持されます。圧縮の最後で点火のためにプラグからスパークを飛ばしますが、スパークによって発生した火炎種が伝搬し最終的な燃焼が始まります。
- 燃料密度が低い場合火炎伝搬も起こりにくくなりますが、このシリンダ内で残っているタンブル流が火炎伝搬を支えます。つまりタンブル流は燃料の均一分布だけでなく、燃焼開始時の火炎伝搬にも影響しているのです(*3)。
Figure 2: タンブル流による火炎伝播
吸気量が少ない時はどうするのか
- エンジンの回転数が落ちれば吸気量は少なくなります。それに伴い吸気速度も落ちるので、タンブル流は形成されにくくなります。Figure 3が示すようにポート噴射を持つ従来タイプのエンジンでは、吸気ポート内で燃料と空気を混ぜるため、燃料密度の均一化という意味ではタンブル流をそれほど必要としません。
Figure 3: エンジン回転が低い時はポート噴射(FA20)
- BRZ/86に搭載されているFA20エンジンは、Figure 3のようにポート燃料噴射と直接燃料噴射の両方を持っており、エンジン回転数によって使い分けされます。ですが先程説明したようにタンブル流は火炎伝搬も補助するので、エンジン低回転時にはEGR還流率を上げることができないとも言えます。
- もちろんFA20はスポーツ用の自然吸気/高回転志向エンジンなので、EGR還流率は低めになります。目指す性能と設計の間に矛盾はありません。
- では、FB20/FA20DITのように直接燃料噴射のみを持つエンジンの場合ですが、対応は単純で全体の吸気量が落ちたとしても、タンブル流生成の吸気速度を維持するため吸気経路を狭くします。その仕掛けがTGVです。
Figure 4: TGVで吸気経路を狭める(FB20/FA20DIT)
- タンブル流形成に充分な吸気量がある場合TGVは開いています。当然ながらエンジン高回転時、TGVはオープンです。エンジン低回転時にはTGVを閉じて吸気経路を狭くすることでシリンダへの吸気流入速度を上げ、タンブル流形成を維持します。
タンブル流はリーンバーンでも大切
- FB20/FA20DIT環境性能に関する最後のアイテムとしてTGVを説明しましたが、CB18では採用されていません。どうやら吸気ポート側の形状を工夫し、TGV無しでもタンブル流を維持できるようにしているみたいです。
- タンブル流はリーンバーンでも非常に大事な要素となっています。そして火炎伝搬で触れましたが、スパークプラグもリーンバーンでは着目の対象となります。次回のCarカテゴリーレポートではタイトルを変えますが、内容としてはスーパーリーンバーン技術とCB18の関係を扱いたいと思います。
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Notes
- ちなみに横方向回転の流れはスワール(Swirl/渦)です。
- 燃焼時に活性化する空気量に対してはストイキとなる量の燃料。
- Figure 2は雑に書いてます。タンブル崩壊が表現しきれていません。
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