OPアンプによるアナログ回路(1)
2022/12/12
|
[Prev]
[Next]
[Top]
,
Analog Design
[Prev]
[Next]
|
アナログ信号の操作/演算はOPアンプを使うことがほとんど
- アナログ回路の動作を理解するには、そこで使用されている素子/コンポーネントと、それらを使用した回路ブロックの機能を見ます。ですがトランジスタを用いたアナログ回路の場合、動作点やパラメータなど考慮する点が多く、回路の動作を理解するだけでも大変です。
- 理解が大変ということは設計も大変なため、現実的なアナログ回路設計、特にアナログ信号の処理/演算部ではOPアンプ(Operational Amplifier)が多用されます。
- なぜOPアンプが多用されるのか、それは「OPアンプはコンポーネントの外側にあるフィードバックパスで制御する」からです。フィードバック/帰還パスに置く抵抗の値で増幅度を設計できてしまうのです。
- しかしOPアンプの中の話は別レポートとします。今回は「OPアンプを使った回路を読む」ことを目的に、線形動作するOPアンプ回路の代表例を見ていきたいと思います。
仮想短絡がOPアンプ回路理解のポイント
- OPアンプは単独で動かすとコンパレータとして動作します。出力が+側電源(Vcc)/-側電源(-Vee)のどちらか(*1)になります。この出力をフィードバック/帰還で制御するのがOPアンプの使い方です。
- コンパレータ...入力差が小さくても「+端子 > -端子」なら出力はVcc、「+端子 < -端子」なら出力は-Vee...OPアンプ自身の増幅度は$\infty$であると言えます。
- すると、出力をある値に制御するため帰還パスを入力に接続した場合「+端子と-端子の電位差 $\simeq 0$」であると見なすことができます。増幅度$\infty$ですから$0$ではない値が入ったら発散しちゃいますからね。そうなるように帰還されているということです。この「+端子と-端子の電位差 $\simeq 0$」のことを仮想短絡(Virtual Short)と呼びます。
- 本当にショートしているのではなく、帰還パス接続時に、+端子(非反転入力)と-端子(反転入力)の電位差が$0$と見なせることを指すため「仮想」という言葉がつきます。非反転/反転入力端子間インピーダンスは短絡どころか非常に高い($\infty$)です。
- この仮想短絡を使うとOPアンプを利用した回路理解が容易になります。
反転増幅回路
- では回路を眺めていきましょう。最初は反転増幅回路(Inverting Amplifier)です。
Figure 1: 反転増幅回路
- Figure 1の左側が反転増幅回路、右側が仮想短絡を適用した等価回路です。ここまで簡単だと回路理論云々はあまり考えなくても良いですね。オームの法則理解だけで充分。
- さて、回路解析ですが非反転入力端子が$0V$のため、反転入力端子も$V_{a}=0V$になっていると見なせます。すると、抵抗$R_{1}$を流れる電流$I_{a}$は下記です。
\[I_{a} = \frac{V_{i}-V_{a}}{R_{1}} = \frac{V_{i}}{R_{1}}\]
- そして$V_{a}$と$V_{o}$の関係から、反転増幅度が$R_{1}$と$R_{2}$で決まることがわかります。
\[V_{a}-V_{o} = R_{2}I_{a} → V_{o} = -V_{i}\frac{R_{2}}{R_{1}}\]
- こんな感じで「さっくり」とわかります。引き続き他の回路も見てみましょう。
非反転増幅回路 / ボルテージフォロワ
- 反転の次は非反転増幅回路(Non-inverting Amplifier)です。
Figure 2: 非反転増幅回路
- $R_{3}$は前段出力に対する、信号$V_{i}$の入力インピーダンスとなりますが、回路の増幅度計算には絡みません。
\[0-V_{a} = R_{1}I_{a} → I_{a}=-\frac{V_{i}}{R_{1}}\]
\[V_{a}-V_{o}=R_{2}I_{a} → V_{o}=V_{i}-R_{2}I_{a}=V_{i}\left(1+\frac{R_{2}}{R_{1}}\right)\]
- さて非反転増幅回路にて$R_{2}=0$(ショート)または$R_{1}=\infty$(オープン)の場合、増幅度は$1$になりますね。この回路はボルテージフォロワ(Voltage follwer)と呼ばれます。前段の出力インピーダンスが大きい場合など、回路を分離する目的で使用します。
Figure 3: ボルテージフォロワ
加算回路
- 次は加算回路(Adder)です。オペレーショナル(演算)アンプ感がでてきました。ですが、解析としては帰還パスの電流$I_{a}$が、入力パスの電流$I_{1}, I_{2}, I_{3}$の合計であることを意識するぐらいです。
Figure 4: 加算回路
\[V_{1}-V_{a} = R_{1}I_{1} → I_{1} = \frac{V_{1}}{R_{1}}\]
\[V_{2}-V_{a} = R_{2}I_{2} → I_{2} = \frac{V_{2}}{R_{2}}\]
\[V_{3}-V_{a} = R_{3}I_{3} → I_{3} = \frac{V_{3}}{R_{3}}\]
\[I_{a} = I_{1} + I_{2} + I_{3} = \frac{V_{1}}{R_{1}} + \frac{V_{2}}{R_{2}} + \frac{V_{3}}{R_{3}}\]
\[V_{a}-V_{o} = R_{4}I_{a} → V_{o}=-R_{4}\left(\frac{V_{1}}{R_{1}} + \frac{V_{2}}{R_{2}} + \frac{V_{3}}{R_{3}}\right)\]
差動増幅回路
- 演算を行うもう一つの回路例は差動増幅回路(Differential amplifier)です。非反転入力への電圧$V_{ip}$から仮想短絡を利用して回路の動作を解析します。
Figure 5: 差動増幅回路
\[V_{ip}=(R_{3}+R_{4})I_{b} → I_{b}=\frac{V_{ip}}{R_{3}+R_{4}}\]
\[V_{ip}-V_{a}=R_{3}I_{b} → V_{a}=V_{ip}-R_{3}I_{b}=V_{ip}\frac{R_{4}}{R_{3}+R_{4}}\]
\[V_{im}-V_{a}=R_{1}I_{a} → I_{a}=\frac{V_{im}-V_{a}}{R_{1}}=\frac{1}{R_{1}}\left(V_{im}-V_{ip}\frac{R_{4}}{R_{3}+R_{4}}\right)\]
\[V_{o}=V_{a}-R_{2}I_{a}\]
\[= V_{ip}\frac{R_{4}}{R_{3}+R_{4}} - \frac{R_{2}}{R_{1}}\left(V_{im}-V_{ip}\frac{R_{4}}{R_{3}+R_{4}}\right)\]
\[= V_{ip}\left(\frac{R_{4}}{R_{3}+R_{4}}\right)\left(\frac{R_{1}+R_{2}}{R_{1}}\right)-V_{im}\frac{R_{2}}{R_{1}}\]
- 少し面倒な感じになりました。ここで条件を加えて$R_{1}=R_{3}$, $R_{2}=R_{4}$とすれば、わかりやすくなります。
\[V_{o}=V_{ip}\left(\frac{R_{2}}{R_{1}+R_{2}}\right)\left(\frac{R_{1}+R_{2}}{R_{1}}\right)-V_{im}\frac{R_{2}}{R_{1}}\]
\[=(V_{ip}-V_{im})\frac{R_{2}}{R_{1}}\]
- ですが、上記は2本の入力信号に対して異なる入力インピーダンスを持つ回路になっているため、実際に差動増幅回路として使うには更に工夫が必要です。こういった細かい考慮については別レポートとします。
インピーダンス整合
- 高入力インピーダンス/低出力インピーダンスであることを利用し、容易にインピーダンスを整合することができます。例えば映像信号の場合、$75\Omega$の特性インピーダンスを持ちますが、下図のように、出力$V_{f}$に$R_{o}=75\Omega$を接続することで、出力インピーダンスを決めることができます。
Figure 6: インピーダンス整合
- そして次段の入力も$R_{t}=75\Omega$で終端することにより整合を取ることができます。この場合取り出す電圧は、出力$V_{f}$の半分になりますが、次段の増幅回路で2倍することにより出力レベルが戻ります。例えば上図の回路では$R_{g}=R_{f}$とすれば、$V_{f}$は$V_{i}$の2倍として出力されます。
次回へ続きます
- ここまで帰還パスに抵抗を付けた場合の線形動作回路を見てきました。次回は帰還パスが複雑になった場合、キャパシタを付けた場合などを扱いたいと思います。
|
Notes
- OPアンプの中の話になりますが、最終出力段はプッシュプル回路になっています。
|
2022-12-12: 初版
2022-12-17: 差動増幅回路を追記
|
[Prev]
[Next]
[Top]
,
Analog Design
[Prev]
[Next]
|